組み立てマニュアルに文章が一切ない
1つは予想に違わずIKEAがグローバリゼーションの申し子であるということ。
IKEAの家具は基本的にすべて消費者に組み立ててもらうことを前提として作られている。
ソファーのパーツと一緒に入っていた組立マニュアルを見て驚いた。
文章による説明が一切無いのである。すべての組立工程がイラストで説明されている。

IKEAの製品が組立を前提としているのも、組立費用を製品原価に組み込まないことによる低価格を実現するためだ。
低価格戦略を実現するための手法は他にもある。
店舗を訪れたらわかるが、店舗に商品説明用のスタッフは基本的にいない。
商品のピックアップも店舗内を消費者が巡回して製品番号をメモさせ、倉庫エリアから消費者自ら荷降ろしをしてレジに持っていく。徹底して販売コストも削減していることがわかる。
IKEAの出店地域は欧米を初めてアジア、アフリカと文字通り世界に広がっている。
出店国にあわせてローカルゼリーション行なっていくと、あっという間にIKEAの強みである低価格を実現することが難しくなるのだろう。
マニュアルに文章による説明を介在させると、途端に翻訳というコストだけでなく、様々な調整コストが発生する。
そこを大胆に文章による説明に頼らず、イラストによる説明に振り切っているところに素直に驚いた。
グローバリゼーションとはこのようなことを言うのではないだろうか。
ソファー裏に隠されたポケットの意味
2つめに気づいたこと。
それは予想外なIEKAの顧客志向。
上記のようなローカライゼーションの否定、合理化の追求という、ある意味IKEAという企業の根本をなす点については、予想通りというかグローバル化という言葉がぴったりくるIKEAのイメージどおりだった。
情緒的な印象論でしかないが、そういった点からはどうしても「冷たい」「ドライ」といった印象を受けてしまう。(あくまでは私の印象です)
この写真を見て欲しい。

これはソファーをひっくり返してソファー裏側を見たところだ。
ここに白い生地でポケット状のものがソファーに打ち付けられている。
組み立てている最中は分からなかったのだが、組立マニュアルの最終工程まで辿り着いてようやくわかった。
これ、実は組立に使用した工具(付属のレンチと棒スパナ)と組立てマニュアルを入れておけるポケットなのだ。
思わず「なんという心配り!」と叫んでしまった。
これまでの人生で有名無名問わずけっこうな数の数を組立ててきたが、こういう心配りは初めてみた。
組立家具に付属の工具や説明書は、組立て終わった後は一応どこかに仕舞っておくが、いざ必要なときにはどこに収納したか分からなくなることがほとんどだった。
また、保存してあっても他の家具の付属品と一緒になってしまい区別が付けにくく管理に困ることが多い。
その点、家具自体に工具とマニュアルを備え付けて保存しておけば、どこに仕舞ったか忘れることも、他の工具と一緒になって管理に困ることもない。
おそらく最初はこういう仕様は備わっていなかったのだと思う。
だが、組立を前提とした家具の販売を続けるなかで、消費者から組立後の工具の扱いに困るという声がIKEAに集まっていき、どこかの時点からか、こういう仕様が追加されたのだろう。
消費者、お客様の視点に寄り添った結果、生まれた素晴らしいアイデアだと思う。
なんだろう。このしてやられた感は。
というわけでIKEAのことがすっかり好きになったというお話でした。
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